【最新医療】がんの療養で介護保険を使うには?

公開日:2012年12月28日

2010年から、がんも介護保険の対象になった

介護保険というと、65歳以上の高齢者のためのもの、というイメージがあるかもしれません。しかし、2010年の厚生労働省通達によって、がんの患者さんの在宅療養でも介護保険を使うことができるようになりました。40歳以上で医療保険に加入しており、がんの症状が進行したいわゆる末期状態の方が対象です。医療保険と併用するかたちで、介護保険の使用が認められています。

介護保険が使うことができれば、介護用ベッドや車イスといった在宅療養に必要なもののレンタル、あるいは訪問介護サービスなどが1割負担で済むようになります。また、医療保険では2~3割負担の訪問看護サービスも1割負担になるため、治療費がかさむ家計の大きな支えになってくれます。

早め早めの申請が何より大切

がんの患者さんが介護保険を申請する流れを、順を追って説明しましょう。 介護保険の申請窓口は市区町村の介護保険担当課、もしくは地域包括センターです。ここで、「介護保険申請書」(要介護認定申請書)を記入し、主治医が記載した「主治医意見書」を添えて提出します。この申請作業は、ケアマネジャーに代行してもらうこともできます。申請後は、地域の訪問調査員(認定調査員)が自宅などにやってきて、要介護認定(要支援1~要介護5)のための基本調査を行います。そうして要介護度が決まると、晴れて介護保険の使用が始まります。

ここで注意したいのが、申請するタイミングです。通常は、介護保険の申請から要介護度の認定までに約1ヵ月間かかります。しかし、がんの患者さんは急に症状が進むことがあるため、1ヵ月も待つことができないケースも少なくありません。従って、病院に入院しているうちから、先手を打って介護保険を申請することが大切です。制度上も、末期がんの患者さんに関しては、退院を決めた時点から介護保険を申請することが認められています。

ケアマネジャーに申請を代行してもらう場合は、入院先の病院の地域連携室などに相談するとスムーズでしょう。地域連携室では、地域包括センターや居宅介護支援事業所と連絡を取り合って、ケアマネジャーとの仲介をしてくれます。早めに相談することで、スピーディーに介護保険を受けられるようになります。

「主治医意見書」の内容で受けられるサービスが変わる

もう1つ、大切なポイントとなるのが、主治医が記載する主治医意見書です。この内容次第で、介護保険で受けられるサービスが大きく変わります。なぜなら、通常、要介護度はADL(日常生活動作)を基準に判定されます。しかし、がんの患者さんは、かなり症状が進んでも歩くことができたり、自分で座っていられたりする人もいるため、そのまま申請すると要支援1~要介護1と低く判定されることがあるのです。前述した介護用ベッドのレンタルなどは、要介護2以上でなければ利用できないことがあります。

要支援1~要介護1で介護用ベッドなどのレンタルをするには、要介護認定のための基本調査結果で「福祉用具貸与が必要と」認められなければなりませんが、その際の根拠となるのが主治医意見書なのです。

主治医意見書には「診断名」の欄があり、ここに「進行性かつ治癒困難な状態にある悪性新生物(がん)」という趣旨を記入してもらうことが大切です。また、「症状としての安定性」を記入する欄も重要なポイントです。「安定」「不安定」「不明」を選ぶ書式になっていますが、「不安定」にチェックしてもらいましょう。ここでいう「不安定」とは、症状が一定でなくいつ介護用品が必要になるか予測がつかない、すなわち早い段階から介護用品をレンタルできるようにすべきという意味です。

また主治医意見書では、がんなどの疾病の経過や投薬内容を記載する欄もあります。ここには、外出や社会参加の機会の減少、家庭内での役割の変更(これまで自分が料理していたが、他の家族がするようになった等)、薬によって睡眠や痛みをコントロールしていることなどを具体的に書いてもらうことが大切です。

主治医によっては、患者側から何も言わなくても上記の記載をしてくれる場合もありますが、中には主治医意見書の記載に慣れていない医師もいないわけではありません。医師に直接言いにくい場合は、看護師やケアマネジャーに頼んで、介護保険が通りやすいよう言葉添えをしてもらうといいでしょう。

退院後を支える在宅医も早めに決めておこう

なお、病院の主治医が忙しくて主治医意見書をすぐに書けない場合は、退院後の療養を支える在宅医に頼むことも可能です。ケアマネジャーに相談すると仲介してくれることでしょう。退院して在宅に移る際、切れ目なく医療を受けられ、介護保険を使えるようにするにも、早い段階から在宅医は決めておくことも大切です。早め早めに対応することで、がんの患者さんも上手に介護保険を使うことができます。

◎ポイント
・介護保険の申請は入院中から始める。
・「主治医意見書」は具体的に記載してもらう。
・病院の医療連携室に相談し、介護保険の申請や、在宅医の仲介などをしてくれるケアマネジャーを紹介してもらう。

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